書店員さんからの推薦文

世界はたくさんの視線と声で満ちている。それらを都合よく並べるのでもなく、きれいにしきつめるのでもなく、網目そのままにしている。かいくぐっていくと、近所を歩いていたはずが、いつのまにか変な場所にたどり着く。そんな小説を読む快楽でいっぱいです。
——かもめBOOKS 前田隆紀

あちらとこちらの境界線はどこだ。横田創の描く世界は、境界線など曖昧で、普通は踏み越えないと高をくくっている「あちら」側へ簡単に行きうることを教えてくれる。刈り上げを逆撫でされたようなゾワリ感。唯一無二の作家。
——Carlova360 NAGOYA 奥川由紀子

正義とは相対的なものであって、向けられた者にとっては迷惑でしかない。他者を自らの中に抱え込んでしまう堪え難さ。善意を踏みにじられたときに渦巻く気まずさ。他の誰でもなく、自分に宛てられた作品だと思いたい。
——恵文社一乗寺店 鎌田裕樹

この短編集は、入口だ。著者に誘われて、覗き込み、一歩でも踏み込んだら、後戻りはできない。振り向いても誰もいない。道しるべもない。無事に現実に戻っても、日常に潜む「スキマ」を探す癖に悩まされるだろう。
——双子のライオン堂 竹田信弥

横田創は、人間が死への衝動を抱えたまま生きているという矛盾を抱えた存在であることを思い出させる稀有な作家だ。
——BOOKS青いカバ 小国貴司

彫刻刀で素材を彫るような。ときに大胆に削ぎ落とす短篇ならではのスピード感。あるいは、細部を刻み込んでいくリズムのグルーヴ。よくある光景の中から、〈個〉を析出させる。書く作業が、言葉が、浮かび上がらせるもの。見えなかったものが見えてくる衝撃。
——リブロ 野上由人

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