覚えていること、思い出すこと、忘れてしまったこと。
瞬く記憶と訥々とした言葉の結び目は、
忘れたことさえ忘れてしまった微細な感情や何気ない光景を、
読者の胸の奥にある、ちいさな空き地に映し続けるかのようです。
――おへそ書房 小宮健太郎

情緒に頼らない文章、細部の作り込みのすごさ、過剰なくらいの物語性、
全体的に壊れたドローンのように不安定なかんじ。
太田靖久の小説を読んでいるときにしか、その文学世界のなかでしか、
知覚できない、遭遇できない、特別な場所があって、私はそこに引き込まれた。
――梅田 蔦屋書店 北村知之

普段の生活でわかったふりをして見過ごしている物事、または人との関わりについて。
自分の気持ちすらわからなくなりながらもこの小説たちはあきらめずに手を差し伸べる。
その先を見つめたい、そう思いながら読んでいました。
――SUNNY BOY BOOKS 高橋和也

ここに書かれている全ては、それ以外の言葉にならない。沈んで、もう、浮かばないもの。ただ、忘れさられようと望む彼らの声に、聴こえないふりをして、どのページをなぞっても、ずっと遠いどこかと、誰かのことを思い出しながら読んでいた。
――恵文社一乗寺店 鎌田裕樹

普段は気にも留めない、けれどふとした瞬間に意味を帯びだす魅力的な細部が溢れる彼の小説は、書いてある以上のことを思いださせる。そして世界の途方のない奥行きを想いたくなる。真摯な姿勢をもつこの素晴らしい一冊が、貴方を揺るがす本となりますように。
――toi books 磯上竜也

後に、”あの時”に起きたことの意味を知ることは多い。
いま目の前で起こっていることをすぐに正しく理解するのは困難だ。
それは、当事者は常に外にいるから。
ここには、その時をとらえた物語がある。
――双子のライオン堂 竹田信弥

自分を壊すことができず、ただ嘆く。
幻想的な寂しさと孤独の世界の中で、ふと温もりを感じることがある。
それはこの物語の中にある絶妙に不安定な『人間味』で、
私はそれがとても現実的に思え物語に引き込まれていった。
――丸善ジュンク堂書店 川合雄高